ニュースリリース
2024年09月30日 掲載
工学部 電気電子工学プログラム(GX研究センター兼任)の永岡 章准教授が、日本熱電学会 2024年進歩賞を受賞しました。この賞は、熱電科学、工学と技術並びに関連分野において卓越した業績を上げたと認められる満40歳以下の若手研究者に贈られるものです。表彰式は、第21回日本熱電学会学術講演会の期間中(2024年9月24日~26日)に行われました。
永岡 章(工学部 電気電子工学プログラム担当 GX研究センター兼任)
「高品質な多元系化合物単結晶成長技術を基盤とした高効率熱電変換材料の開発とデバイス応用」
永岡氏は、「高品質な多元系化合物単結晶の育成」を中心とした基礎研究を通して、高効率なエネルギー変換材料の開発とデバイス応用を推進してきました。太陽電池や熱電デバイス応用のために必要な大面積の多元系化合物単結晶成長技術を有しているのは世界的に見て永岡氏のみであり、特筆に値します。
熱電材料開発の業績として、環境調和型Cu2ZnSnS4 (CZTS)単結晶の開発とデバイス応用が挙げられます。CZTS 材料は、レアメタルフリーの太陽電池材料として研究されてきました。しかし、周期表で隣接するCuとZnが入れ替わることで不規則性が生じ、この格子欠陥に起因するキャリアの再結合が変換効率向上を妨げ、現在においても最高変換効率は10%程度で停滞しています。永岡氏は単結晶を用いた信頼性のある基礎研究の蓄積を通して、太陽電池には不利なCu/Zn不規則構造が効果的にフォノンを散乱することで低い熱伝導率に有利であると考え、CZTS単結晶を熱電材料へ応用しました。実際に、粒界や異相の影響のない高品質なCZTS単結晶から高い電気特性と低い熱伝導率を両立させることに成功し、無次元性能指数ZT = 1.6 を達成しています。さらに CZTS単結晶を用いた熱電デバイス開発も行い、変換効率4%を達成しています。この多元系材料と単結晶の固有特性を活用した研究成果は、高性能熱電材料に対する新しい材料設計指針を与えることから、今後の展開が期待されます。
永岡氏は、国内外の研究者との連係を通して着実に研究成果を実らせており、それらは60報近くの原著英語論文に纏められています。永岡氏の研究成果は国内外の学会や団体から評価され、指導学生も含めて多数の学術賞を受賞しています。特に、先述の研究成果によって、第 16回日本熱電学会学術講演会優秀講演賞や第16回日本熱電学会優秀論文賞を受賞しています。研究を通して得られた新たな技術についても積極的に特許を出願し、権利化しています。日本熱電学会においても講演会委員と学会誌編集委員を担当し、学会運営にも貢献しています。
優れた研究能力、それに伴う研究業績、さらに、日本熱電学会における貢献から、永岡章氏は本学会における進歩賞の受賞に相応しいものと認められます。
△進歩賞受賞講演の様子
▼最高性能値を有する高効率n型熱電変換材料の開発~独自技術で高効率熱電発電デバイスの実現へ前進~(2024.8.22)https://www.miyazaki-u.ac.jp/newsrelease/edu-info/n.html
▼一般社団法人 日本熱電学会https://www.thermoelectrics.jp/
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